PlayStation 5とXbox Series Xの情報で(筆者が)盛り上がっていた裏で、AMDのモバイル向けRyzen 4000番台の公式情報も来ていたので、簡単に見ていきましょう。
AMDがRyzen 4000モバイルAPUを発表:「S」シリーズも
先日AMDからモバイル向けGPU内蔵CPUである、Ryzen Renoir APUに関する情報が公式に発表されました。
Ryzen Renoir(ルノワール)はいわゆるモバイルRyzen 4000シリーズであり、アーキテクチャはZEN 2で、7nmプロセスとなっています。
Renoir APUのラインナップ中、ハイエンドSKUにはRyzen 9 4900H、Ryzen 9 4800H、Ryzen 5 4600Hがあります。
HシリーズはすべてTDP 45Wで、4900Hに関してはベース3.3GHz、ブースト4.4 GHzという特に高いクロック数を有しています。
(SKU:PC業界ではラインナップ、ファミリー、製品群的な意味でよく使われる)
「S」シリーズはさらに低電力のTDP 35Wで、Ryzen 9 4900HS、Ryzen 4800HS、Ryzen 4600HSがラインナップ。
Ryzen 9 4900HSはベース3.0GHz、ブースト4.3 GHzで4900Hよりわずかに低クロックになっていますが、4800HSと4600HSはそれぞれのHシリーズとの同等のクロックになっています。
「Renoir」のコードネームで呼ばれるモバイルRyzen 4000シリーズプロセッサは、7nmプロセス採用のZen 2アーキテクチャに基づいており、AMDによると前世代のZEN+と比較して25%もIPCが改善したとのことです。
これは驚くべき進化といってもいいですね。
(IPC:周波数当たりの処理能力のこと。例えば同じ3GHzでも25%IPCが向上すれば25%の性能向上となる)
また、2倍の電力効率とトランジスタの状態切り替えを5倍高速にすることにより、SoCの電力消費を20%削減することに成功。
Renoir APUのサイズは25x25x1.38mmとなっており、トランジスタは98億個に上ります。
また、AMDはRenoirプロセッサーは新機能を搭載し、アイドル状態検出、アクティビティ検出、電源状態検出のクオリティを改善。
それにより、Ryzen 4000シリーズを搭載したノートPCはバッテリー寿命が1〜2時間長くなると予想されており、各PCメーカーもRyzenを採用しやすくなるでしょう。
Ryzen 9 4900Hのグラフィックス性能はPS4レベル!?
コア/スレッド | GPUコア | GPUクロック | 単精度GPU性能 | TDP | |
---|---|---|---|---|---|
AMD Ryzen 9 4900H | 8C / 16T | 8 | 1.75 GHz | 1.79 TFLOPS | 45W |
AMD Ryzen 9 4900HS | 8C / 16T | 8 | 1.75 GHz | 1.79 TFLOPS | 35W |
AMD Ryzen 7 4800U | 8C / 16T | 8 | 1.75 GHz | 1.79 TFLOPS | 15W |
AMD Ryzen 7 4800H | 8C / 16T | 7 | 1.6 GHz | 1.43 TFLOPS | 45W |
AMD Ryzen 7 4800HS | 8C / 16T | 7 | 1.6 GHz | 1.43 TFLOPS | 35W |
AMD Ryzen 7 4700U | 8C / 8T | 7 | 1.6 GHz | 1.43 TFLOPS | 15W |
AMD Ryzen 5 4600H | 8C / 12T | 6 | 1.5 GHz | 1.15 TFLOPS | 45W |
AMD Ryzen 5 4600HS | 6C / 12T | 6 | 1.5 GHz | 1.15 TFLOPS | 35W |
AMD Ryzen 5 4600U | 6C / 12T | 6 | 1.5 GHz | 1.15 TFLOPS | 15W |
AMD Ryzen 5 4500U | 6C / 6T | 6 | 1.5 GHz | 1.15 TFLOPS | 15W |
AMD Ryzen 3 4300U | 4C / 4T | 5 | 1.5 GHz | 0.96 TFLOPS | 15W |
AMDのグラフィックスはIntelよりも秀でている部分であり、今回のRenoirに搭載されるGPUも非常に強力で、PS4(1.84 TFLOP)と同等の処理性能を持っています。
今回のグラフィックスは「Navi」ではなく「Vega」ですが、アーキテクチャの改善が進んでおり、電力効率も良くなっているようですね。
メモリに関しては、AMDはモバイル向けに最適化されたInfinity FabricをRenoir APUに導入することにより、ファブリックスイッチの電力効率が最大75%向上し、統合GPUのバス帯域を2倍にすることに成功。
2つの独立したメモリコントローラーを搭載し、メモリは定格でDDR4-3200MHz、LPDDR4X-4266MHzまで対応できるようになりました。
また今回のRenoir Ryzen 4000シリーズは、PCIeが4レーン、USBが2つ追加されて拡張性がさらに改善され、AMD Smart Shiftテクノロジーも正式導入。
Smart Shiftテクノロジーによって、CPUとGPUの電力消費を融通しあい、シチュエーションによって最適な電力効率で処理性能を上げることが可能になります。
これは最近話題のPS5にも採用されている技術です。
dGPUを仮想的にiGPUとして認識させることができるので、独立したグラフィックスを積んでいる場合もiGPUと同様に電力消費を効率的に分配することができるようですね。
(dGPU:descrete GPU、独立GPU、簡単に言えばグラフィックボード。/ iGPU:integrated GPU、統合GPUやCPU内蔵CPUのこと、Intelで言えばIntel UHDグラフィックスとか。)
AMDのRyzen 4000シリーズの投入によってIntelの独壇場となっているノートPC市場に大きな変化が起こるとおもしろいですね。
今までのAMDはふたを開けると微妙な性能だったりしたのですが、ZEN2からはちゃんと「良い感じ」に仕上げてきているので、やっとノートPCのCPUシェアも変わってくるかもしれません。
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